快速しれとこ摩周”指定席” 乗車レポート

先日10月31日をもって、北海道の釧網本線を走る快速しれとこ摩周の指定席連結が終了しました。

8月17日に突然JR北海道からプレスリリースで発表されて、当時は正直驚きました。

快速「しれとこ摩周号」に指定席を試験的に導入します(JR北海道プレスリリース)

今回の試験導入では、網走→釧路を走る快速しれとこ摩周を、通常1両編成のところを2両編成に増結し、後ろ1両の一部座席を指定席として発売されました。

JR北海道の快速列車指定席といえば、真っ先に快速エアポートのuシートが思い浮かびますが、あれは6両編成の列車ですから、そのうち1両指定席でも驚きませんし、何より専用車両です。

対して、今回の対象は普段1両編成で運転しているキハ54ということで… 何から突っ込めばいいのかわからないレベルにちょっと理解不能な試験運用でした笑

何もわからないまま、運行初日を迎える

さて、試験運行の知らせは入ったものの、どのような形態で運転されるのかについて、JRからの公表は一切なし。

まあ、わかっていたことは、「車内で指定席券の発売は行わない。乗車前にみどりの窓口で購入する。」という点だけ?(プレスに書いてあった)

で、日頃キハ54に乗っている身からして一番気になったのが、座席。

キハ54には大きく分けて2つの種類の座席が1両の中に存在する。

1つが車両中央部のクロスシート。もう一つが車両両端のドア付近にあるロングシート。

プレスリリースには、「2号車の一部を指定席として…」といったことが書いてあったので、全部じゃないのはわかる。とりあえず、後者のロングシートが指定席ということはないだろ(てか、あの席指定されたくないもん…)←※個人的な意見です

じゃあ、クロスシート部が指定席として発売されるんだろうなーというところは察しがつく。

でも、それでは終わらない。一部のキハ54は、クロスシートの座席の向きを変えることができない。そのため、約半数の座席が進行方向前向き、残りの半数が進行方向と逆側を向いてしまう。

これは指定席としてどうなんだろう…

と、ここまでくると、

進行方向を向ける、約半数の座席しか発売しないのでは!?

という仮説が生まれたのだがー…

まーーー、確認の方法がなかった。

券売機や、えきねっとで検索しても、座席表が出てこないんだもん。

結局、運行初日にみどりの窓口で確認したところ、半分ではなく全席発売されてました。

たまたま運行初日に乗れた

さて、9月1日の運行初日を迎えた訳です。

8月17日に運行の発表があって、9月1日に北海道のしかも道東に行けるかって言われたら普通無理ですよね。僕も本州民ですから、普通は不可能です。

が、ちょうど当日は大学の夏休み! だったので、元々北海道で旅行中でした。レンタカーで道東を周遊している最中だったのですが、、、

数日前に気づいたんですね。「え、コレ乗れるやん」って。

そんなわけで、前日は清里町内で車中泊。裏摩周展望台や神の小池、天に続く道に行った後、乗車することにしました。

(今回の話題とは無関係な「天に続く道」の写真。綺麗だったので皆様も是非! ちなみに裏摩周展望台はキリでなーんも見えませんでした笑)

どこの区間乗ればいいんだ???

で、乗ることは決まった。車でちょっと走れば釧網線はある。が、しかし。

車で来ていた僕は、列車でどこかの区間を一往復するより他に選択肢がなかった。片道は問題のしれとこ摩周の指定席に乗るとして、もう片道が困った。

だって釧網線の本数少ないんだもん!

ちょうど同じ時間帯に走る対向列車はあったけど、知床斜里駅で行き違いなんですわ…(知床斜里駅がこの近辺で唯一みどりの窓口がある駅!)

要するに、知床斜里駅のみどりの窓口で切符を買ってから、どこかの駅まで移動して、列車で往復するしかなかったんです…

今後の予定(僕のドライブの予定)を考えて、乗車区間を中斜里→清里町に決定。

当然、切符を買わなければいけないので、近隣で唯一の有人駅、知床斜里駅に車を走らせました。

切符購入に苦戦

で、駅に着いたらさっそく窓口で指定席券と往復の乗車券を購入。

「すいません、次のしれとこ摩周の指定席って今日からですよね。中斜里から清里町まで1席お願いします。あと、清里町と中斜里の間の乗車券も」

この時の駅員さんの顔、想像できますか?

もーね、いろいろパニック。以下パニック要素

① しれとこ摩周の指定席発券するの多分初めて(そりゃ運行初日だしな)

② なぜか隣の駅からさらにもう2つ隣の駅までの指定券を要求された

③ この駅からの乗車券じゃないってどういうこと!!??

あの時の駅員さんあたふた、すごかった。(ご迷惑おかけしました)

この後車で移動することなども告げ、何とか切符購入。

ついでにマルスで座席表も見せてもらいました。

さて、切符の用意ができたら、急いで車へ戻ります。というのも、この時点で汽車の時間まで結構ギリギリでした。

12㎞先の清里町駅の近くに車を止め、まずは網走行のしれとこ摩周に乗車。

同じしれとこ摩周でも、網走行には指定席はありませんので、普通の快速。

地元客の乗り降りの後、僕が乗車。どうせすぐ降りるのでデッキで待機

中斜里は二つとなりの駅ですが、快速は間にある南斜里を通過するので実質一駅。

すぐに降ります。

行きの乗車券は購入しなかったので、整理券と一緒に現金で精算。北海道のワンマン列車には何百回と乗ってると思いますが、整理券と現金で支払ったのはこの時が初でした。

なんか地元民っぽくて楽しかった笑

若干どや顔で運賃を支払って下車。一緒に鉄道ファンと思しき人も下車。

同じことを考えてる人が他にもいたとは… と思っていました。実際その方も僕と同じしれとこ摩周に乗りましたが、指定席の存在は知らなかった様子でした。鉄道ファンにすら認知されてないって…(泣

いざ乗車!!!!!!

さて、しばし待っていると、踏切が鳴り始め、やってきました。お目当ての

「快速しれとこ摩周with指定席」

やってきたのはなんと2両とも「流氷物語号」に使用されるラッピング車両。ちなみにこの組み合わせ、通称、流氷編成(正式な名前じゃないけど、界隈はそう呼んでる”気がする”)。

さて、停車時間は僅かなので、写真は後回しにしてとりあえずしれとこ摩周に乗車。

本日は運転士が2名乗務。釧網線では珍しくありません。

1号車はいつもより少し空いてるかなーといった混雑度。30人ほどが乗車してました。

繁忙期に比べれば圧倒的に空いてますが、(北海道の)ローカル線でこの乗車率はかなり優秀です。

さて、今日は自由席に構ってる暇はありません。なんせ乗車時間は僅か7分。ぼーっとしてる時間はないんです。

足早に1号車を突っ切り、指定席のある2号車へ。

と、2号車の前よりデッキにスーツ姿の男性が3名…

2号車に立ち入る前に、指定席券の確認をさせてほしいとのことでした。

まあ、運行初日とあって、指定席の制度を知らない方も多いので、説明要員といったところでしょう。

さっそく指定席券を提示。

「中斜里→清里町」(←わいの指定席券の券面)

社員さん「え、っと、、きよさとちょうは、、、つ、ぎか。次か。あ、次ですね」

はい、3回も言われちゃいました笑

「すいません、変な乗り方で…」とお互い笑いながら簡単に挨拶をしつつ、車内へ。

指定席の乗客は10名ほど、窓際席の半分が埋まっている程度でした。

さっそく自分の席に行くと…  ん??なんだこれ?

「おー、なるほど」

思わず関心してしまいました。この座席が指定席であることを示す不織布が各座席に置いてあったのです。

試験運行の発表があってから、「外国人に対するアナウンスはどうするのか」という点はとても疑問に思っていましたが、これで解決。納得です。

これなら間違えて座ってしまうこともなく、多くの人がルール通りに座席を利用できる。

と、JRも思っていたのでしょう。が、一つ大事なことを忘れていたようでした。

しれとこ摩周に使用されているキハ54って、冷房がついていないので、夏場は窓を開けて走ります。この日も9月1日ということで、北海道とは言えまだ暑さが残っていました。

しかもこの車両の天井では、扇風機が乗客に快適な環境を提供するべく、全力で回っているではないか。

で、大事なのはここから。この布、とても軽い。

大事なのでもう一度。「軽い」

お分かりだろうか。もう、車内のあちらこちらに白い布が散乱していたのだ。

同乗している社員さんが必死に回収して、座席の隙間に挟んで止めようとしているが、すぐに飛んでしまう。。。(社員の皆さま、お疲れさまでした)

冬になれば解決する話ではあるが、それでは夏場に運行できない。これは大きな課題といったところのようだ…

さて、気を取り直して車内を探索。

特にこれといった変化はなかったが、客室の出入り口上には、「一部指定席」と「2号車」という真新しいプレートが。

キハ54に号車札が入ることは現在ないため、非常にレアな状態(使わないのに付いてる号車札受けもすごいけど)

(通常通り自由席で運行されている1号車にも、ちゃんと号車札は入っていました)

ちなみに「一部指定席」の部分、普段は「🚭禁煙」と表示されている

昔、喫煙車の設定があった時代に、ここをひっくり返して使っていたらしい。

僅か7分で下車

さて、そんなことしているうちに列車は南斜里を通過。まもなく清里町。

降りなければ。。。

指定席券と乗車券を手に、一番前へ。指定席が連結されても、ワンマン運転であることに変わりはない。

と、ここで、前方デッキで社員の方から乗車券の提示を求められました。

指定席の利用状況調査の一環で、乗客全員の乗車券の種類、区間を確認しているとのことでした。

この日、たまたま北海道&東日本パスじゃなったのは幸運なのかな??などと思いつつ、清里町駅で下車。

で、降りたらやることがあります。大急ぎで外観の調査です。

まず1号車の種別サボ。こちらは白地に青文字の「快速」でした(いつもと同じやつ)

ですが、2号車には真新しい「一部指定席」と書かれた種別サボが。

なんか心躍りました笑

また、車両側面にも号車札が。やはりキハ54に号車札が入ってるのは萌える。。。

どうでもいいですが、青空に流氷ラッピング青(この青いラッピングの車両のこと)って映えません?銀世界の中の流氷ラッピング青も好きだけど、夏もまた良し。

と、ここで列車が発車。車内からは社員の方が手を振ってくださいました。お騒がせしました<m(__)m>

乗ってみた感想

乗車区間も短かったので、感想を書くのはいかがかと思うが、これはかなりいいサービスかもしれないと、率直に思った。

釧網線は観光シーズンになるとかなりの大混雑が起きることもあり、そうなると座れないこともしばしば…

何時間もかかる乗車で座れないのは厳しいし、指定席があれば釧網線最大の魅力である景色を好きなだけ楽しむことができる。

釧路行だけではなく、網走行のしれとこ摩周にもぜひ、指定席を連結してほしい。

だが、現実問題としては難しい。キハ54の車両数が圧倒的に足りないのだ。

今回の運行中も、花咲線や釧網線の他の列車を別の車両で運行するケースが連日のように発生していた。

2月の観光シーズンには、今回乗車した流氷編成は流氷物語号の運用に入るため、定期列車に使える車両数は更に減る。

動物との衝突などで長期修理に入る車両が出ることを考えると、もう限界といえるかもしれない。

そんな中でも、何か方法はないかと挑戦してくれたJRには感謝しなけばいけないのかもしれない。

試験運行は中途半端に…

僕が乗車したのは9月1日の運行初日。当初、10月31日までの61日間に渡って試験運行が行われるはずだったが、、、

残念ながら、実際に運行できたのは40日ちょっと。

胆振東部地震や、前日の台風21号の影響で釧網線が長期運休を余儀なくされた。

それによって、試験運行によって得られるデータはあまり意味を持たなったかもしれない。

そして、しれとこ摩周の指定席に乗ろうと思っていたのに、運休で乗れなかった人もいたことでしょう。今回はそんな方へ向けての報告でした!

また、指定席が設定される日を楽しみにしたいと思います